2020年2月3日

苦手克服の重要さ

苦手分野の克服は、自分を鍛えるのに是非とも必要だ。
 その分野が得意になるまで行くかに関わらずそれが有益なのは、なぜある分野が苦手、ある分野が得意なのか自分自身の能力を客観視できる様になるから。
 ドラクエなら戦士が呪文を試みて、自分の長所が魔法使いにない体力だったと自覚できる。
 それだけでなく、実際に、戦士には本来使えないはず魔法分野について自分を飽くまで鍛えていたら、いつの間にか魔法戦士に昇格できるといった場合もある。その場合、最初から魔法使い専門家だった人格とは違う者になれる。
 現実に魔法戦士にしか使えないたぐいの呪文もあり、苦手克服は無駄でない。

 自分は、子供の頃からどういうわけか商売を嫌っていたのだが(母方は商家なんだが)、数年前から或るきっかけで自分にとって一番嫌悪感があった商業分野を網羅的に学習しまくってみたら、明らかに自分の人格が180度反証されるといった経験をした。それは自分を作りかえる過程で、飛躍的に成長させた。
 自分が何を苦手としているか自覚する事が、人格を客体化する第一歩で、その結果、単に世界についてもっと深く広く理解できるだけでなく、より完成度の高い人格像を想定できる様になる。ドラクエでも戦士だけ、魔法使いだけやっている人は、別の職業の特性についても十分な理解をもてない。

 苦手克服は、例えていえば全く素手で、レベル1段階から急峻な登山するみたいに恐ろしくきつい。これに比べると得意分野は競争相手を軽々と抜いて簡単に上位に入れるかもしれない。しかし得意分野で最上位を維持しているだけで満足せず、苦手克服をくり返す事で、得意さの精度や習熟度も上がっていく。
 なぜなら自分が苦手としている分野は得意分野と全く違う性質な筈で、逆照射すると、得意さの本質もより客観的にみられる様になるからだ。

 自分の場合、美術が得意で商売が苦手だったが、商売が客の需要や利益追求という概念を持っていたのに比べ美術は独創第一である。つまり独創は非営利的だった。
 経営学だとプロダクトアウトという概念があって、ジョブスがアイフォンをそれまでの携帯市場にぶち込んだ様なのを指すが、例えば自分がもっていたW-ZERO3の様スマートフォン市場はそれ以前からあった。つまり営利的独創性は飽くまで営業の革新性に過ぎない。しかし美術ではこの点は無視されうる。
 例えばゴッホ、モンドリアンやダーガーは、営業の革新性と全く無関係に独創的だった。苦手分野を克服する事で、真の独創性が逆照射でより見え易くなった。それ以前の自分は直感的には分かっていたが、この真の独創性の分類を理論的に把握するには至らなかった。それで中間芸術に半ば騙されていたのだ。
 スーパーフラット理論はこの意味で、虚構の独創性をまきこむ概念である。自分は理想主義絵画の理論(「私の理想画について 」)を作る事で、一人で村上隆氏の美術的段階を乗り越えられた。しかしその前にあったのは、最も苦手だった商業分野克服の努力だった。