2019年11月25日

著述のわけ

愚か者が突然賢くなりはしないのだから、その様な人々に教えを説くのは全くの無駄だ。寧ろ愚か者はその教えを正しく受け取れないし、逆に教師を逆恨みすらするだろう。イエスやソクラテスを死刑にした人々がその典型例であり、現代の一般大衆も何も違いはない。大衆受けの商いを繰り返し安全な者は唯の一人もありえないだろう。
 この世では尊い人、賢い人を見分け、その様な極限られた人物のみに接さなければならず、その種の人々のみに教えを説かねばならない。だが同時代にその種の人物がいないことも十分ありうるので、著述家が生まれた。そしてそれが人類の生み出した最高の英知の一つだったのは疑いがない。堕落した集団が滅び去ってのち、知恵が初めて価値を伴う。