2019年10月21日

死までの間にすべきこと

所帯をもった男性は途端に魅力がなくなる。吉田兼好のいう通り。それは子煩悩の程度が強いほど、その人が利己的な振る舞いになるからだろう。
 極めて性格の悪い知者より、愚かなりに極めて善良な者の方が遥かに人として優れている。
 肉体美によって若さを尊重されていた者は、加齢とともに急激に侮蔑され始めるのだから、確かに彼らが早死にしたがるほど無謀で愚かな青春を過ごすのも一理あるのだ。

 望まずとも死という救いは来る。程あれ利己的な人間で埋まったこの世は紛れなく地獄なのだから、その中で少なくとも徳を完成へ漸近させるのが、生の間に達せる最高の偉大さである。
 ある愚かな女は、悪徳を程あれ保持するのが当然だ、といい、私を罵った。この女の一生は圧倒的に時間が不足する。
 悪徳を避けられるなら、いかに小さなものでも、いやむしろ小さいほど気づきづらいのだから細心の注意で、避けなければならない。あらゆる悪徳を避ける努力そのものが、消極的な善徳と等しい。