「の」は終助詞として1.柔らかい断定(例「私は知らないの」)、2.問いかけ(例「何がすきなの」)、3.命令(例「だまって食べるの」)と3つの意味がある。一方、関西弁の終助詞「ん」(例「うちは知りませんねん」)はこの「の」が訛った形であるとする。
ところで標準語の「ん」 は、古語で推量などの意の「む」と、打消しの助動詞「ず」の連体形であった「ぬ」が混同されながら崩された助動詞としても使われている(例「どうなんだ(推量。上代東国方言「なむ」と、連語「なむ」の混同)」「俺は知らん(打消し)」)。
ここで、関西弁の助動詞「ん」(例「わしは知らへん」)は、上述の標準語の終助詞「の」が訛って使われている時としばしば混同され、上述の終助詞「の」の3つの意味(柔らかい断定、問いかけ、命令)と、更に「む」から推量、「ぬ」から打消しの意味が加わり、多義的で曖昧になっている。
まとめると、関西弁の終助詞・助動詞「ん」が含んでいる意味は、
1.柔らかい断定
2.問いかけ
3.命令
4.推量
5.打ち消し
と5つあり得、この語の意味を知るには文脈に依らねばならない。
また、標準語の終助詞「ん」は、古語では推量の意味で助動詞「む」か、打ち消しの意味で助動詞「ぬ」として使い分けていたので、平成時代の時点で、短歌や俳句など擬古文の詩語として残るこれら「む」「ぬ」という日本語は、本来伝えたい意味を文脈に依存せずより明晰に伝えるのに有益である。