自己愛の延長としての子孫や血縁のある親族への愛は、真に利他的なものといえようか。そこに慈愛といいうるものがあるとして、自己愛の変形でしかないのではないか。
真の慈愛は価値のないとされるものへも等しく注がれる愛であると同時に、無私の愛である。そして人類にとってはいうまでもなく、自己にとって有害なものへさえ等しく注がれる愛であったなら、それが真の慈愛である。だが慈愛、慈悲、アガペーなどの定義の中には、上述の子孫・血縁のある親族への愛、同胞愛というものが含まれているので、この無私の愛は慈愛の一部であるにせよ、新たに非自己愛的な愛として定義されるべきだろう。