科学(知る事、知識、science)の探究それ自体理想であり、先入観や偏見を除き考えるべきという真理信仰も、既存知識への懐疑的態度も、或る理想的態度といえる。理想を一切廃するという態度はそれ自体も理想で、或る真理探究の方法論への信仰。即ち理想を持つも持たぬも知る事をする者の自由である。
形而下学(自然学、物理学)の領域で事実の前に形而上学的理念を措定し、それにあてはめるよう事実を解釈するという態度は、形而上学の主観的性質を形而下学の客観的性質と混同している為に行われる一般的錯誤である。「物ありて然る後に倫あるなり」、と福沢諭吉は『文明論之概略』で述べた。