2018年7月2日

徳と命の価値

悪徳老人の死は自他に有益であり、高徳な老人の死は自他に有害である。ここで命より高い価値を見出されているのは徳自体であり、結局、自他に与える道徳性乃至それがもたらすだろう功利性に基づいて、ある人の生は値踏みされている。いわば人がその生涯を通じ、人類界でどの程度尊重されるかを確定しているのは、道徳的価値だといえる。
 道徳以外の側面についても、究極のところ功利的な基礎、つまり他者への有益性に基づいて判断される為、その本質は道徳性にあるといえる。命の本体にある物は、他者に対する有益さ、快、幸福性としての道徳性ともいいかえられる。功利性はその快に還元した単純化だと解釈できる。