神が宇宙を作り人類の始祖たる夫妻に地球の生物を管理させようとしたが、 悪性者の蛇にだまされた妻イヴが知恵の実を食べてしまい、理性を手に入れ恥を知る存在になったため楽園から夫妻は追放される。人類は自力で生きる為に様々な苦難の果てに、天に届く塔を建てて全人類の言葉を統一しようとする。しかし堕落して神をも超えようとおごりたかぶった人類を神は罰するため亡ぼすと決める。ノアの夫婦は同性愛や姦淫のはびこるソドムの村から逃れ、全ての生物を一組ずつ箱舟にのせて大洪水から地球を守る。大洪水で滅亡した地球生物の世界に、ノアや生物たちはおりたち、神なき世界を生きる。
後の時代、イエスという婚外交渉で生まれたろう子が、処女から生まれたと騒ぎになって、やがて教会で自分の出自に悟り、大工を経て独学、親離れし、上述の神とノアの末裔と自称するユダヤ人の言い伝えにあった人類を救済する存在だとイエスは自称しだす。12人の弟子を含めて彼を信じた貧民らをイエスは不思議な癒しの力で救済しだす。その頃ユダヤ人は法律家を兼ねており、難解な法で人類を苦しめ、また高利貸しとして商売でも成功をおさめていた。イエスは弟子をつれユダヤ教の教会から商人をおいだしたり、目の見えない人を奇跡によって見えるようにしたり、難解な法でなく人の心に訴える単純明快な神への愛を説き、新たな権威者としての地歩を確立していく。しかし既得権のユダヤ人達はこれを憎み、イエスが慈善心のため罪人として蔑まれるマグダラのマリアから高価な香油を注がれると、 これをみた会計係であるユダヤ人の弟子・イスカリオテのユダは、ついにイエスを裏切る決心をする。最後の晩餐とよばれることになる食事の席でイエスはこの中に裏切者がいる、そのような者は生まれてこない方がよかったのだと述べる。動揺する弟子たちの中でユダは驚くも決心を固め、二束三文でユダヤ人たちにイエスを売り飛ばす契約を結ぶ。ユダヤ人達は誘導尋問でイエスをやり込めて、冤罪にかける。民衆たちはイエスにだまされたと考え、裁判官に死刑を求刑する。裁判官は冤罪に気づいているが、衆愚の狂った憎悪の声に負けてイエスを死罪にする。にされたイエスを弟子たちは遠くから眺めていたが、やがて逃げ出す。
「神よ神よ、なぜ私を見捨てたのですか」とイエスは叫び、絶命する。それに石つぶてを投げる民衆。 しばらく後で、弟子たちの隠れ家にいきなりイエスがあらわれて言う。「世界に私の教えを伝え広めなさい」
弟子たちはイエスが復活したと考え、宣教師となる。ユダは自責の念に駆られて自殺する。 12使徒たちの手記はこうして新約聖書となり、ユダヤ人たちの物語である旧約聖書と共に世界へ広がっていった。
この様な物語構成になっているが、旧約部分には箴言や詩の章があったり、新約部分にはイエスの生前の言行録や弟子たちの倫理的な信仰が述べられており、全体として神話や史実を含む壮大な寓話となっており、人類が嘗て生み出した書籍の中では最も悲劇としての価値も高い作品の一つといえるだろう。