あお春の新緑のごとく君想う
コーヒーの瓶にうつりし緑かな
南から流れてくる雲冬をゆく
星の中町の明かりも星屑ぞ
未来から届く手紙に君想う
松風に潮風混じり砂白き
矢のごとく時の川辺にねこじゃらし
始まりの鐘は鳴りけり月天心
焼きすぎた刃のごとく我思う
片手のみ残りし戦芸術家
芸能のオレンジ色のネオンかな
福島のサービスエリアの割烹着
淀みなく予定調和の菓子消費
しゃらしゃらとお馬のゆくぞ結婚式
銀色の宇宙に寝ては流星群
扉あけ勇者入れば栗きんとん
たんまりとフランス旅行の雁がねよ
ギター弾き銀行員の趣味の茣蓙
お香にもとってつけては夜深まり
薬缶なくあるのはさらにさらさらに
たらちねの月ただまみえり母のごとく
太陽に烈しく求む虎吼える
ラーメンに伸びた砂漠は我らの吐息
かまいたちスーパーで買えばピラミッド
照り返すテールランプに君うつす
速球はミットに収まり清らなり
横殴り台風一過神すさぶ
灰色の巨大な空に押しつぶされる
まわりつつとんび鳴きけり水色の空
闇ふかく沈んだ沼のこきはなだ
牛あるく水戸の牧場のどけしや
何重に虹の向こうに雪の降る
命さえ金塊よりも満天に
みぬうちにまちの姿は香りなす
何度でもはるかな川にもみじ映る
ゆきだるまねこのひたいにつららの水
ユーチューブあなたを想うほっぺたよ
唐紅トントンと打つ大工の身
千葉の雲照る紅葉に千切れけり
やたがらす10円くわえ花火見る
そうぞうのさぞあかるしやマリアの日
仏典に時を忘れて星しずか
石南花のピンクの花の庭歌う
海笑い砂浜に吹くトルマリン
さばさばと頭上に世界閉じる本
先駆けて鐘の鳴る間に竜神橋
君想い手紙の白は絵を載せり
すすきのはら工場跡地われひとり
きつねさんススキ野原に月を見る
新宿のセンタービル都市の暗黒
夜の中ひびく流星松風よ
うなばらに北斗七星掲げけり
生まれては消えゆくいのち星の色
旅先で見た渓谷のささめ雪
金色堂ふりのこしてや流星群
佐竹寺しずかに立ちてわれ静か
五浦の展望台から太平洋
みずみずし君の両手に林檎持つ
片栗粉まぶしたように若き雪
鏡餅気づく間もなく月過ごす
ゆず湯にて浮かぶ心はぷかぷかりん
立ち止まり筑波の道に紅葉見る
筑波山見渡す遥かに富士さびし
茨城の田のはてしなく街ゆたか
姪っ子と花園川に薄の船
夢のごとし我が町に吹く冬の風
さっぱりと音沙汰もなき友とめだか
草葉にて日立の庭にチンチロリン
日立駅海はうつくし日は尊し
新宿の闇とネオンと外国人
さるすべり椿ちりけり家の跡
発つ鴎大津に住みて通る皇
かんたんな午後の緑茶は久慈深し
うららかな冬の陽ぬくきサンルーム
電柱に鴉止まりけり柿の色
しぱしぱと目まばたけり木瓜の花
鬱蒼と森茂りけり竜神谷
鮟鱇のどぶ汁はても世界一
冬の陽にほしいも食べて息をつく