2009年7月18日

後生の芸術家への忠告

この世に於いてなんらかの芸術を図ろうとする者は、必ず次の問題に直面することになる。先ずそれは自由な独創の行いな筈だが、表現されたものを利用しようとする多くの俗物がその成果物にたかるということ。そしてたかられたそれはかれの知らぬ間に商材となり、俗物の食い物になるということだ。

 次に才ある芸術を模倣して生計をたてようとする模造者が、遂には寄ってたかって集団をつくりありもしない権威を偽造しだす。こちらの害毒は最初の例よりさらに深刻であり、時として本来の素晴らしい芸術をも覆い隠しそれを異端あつかいすることさえある。

 この二つの害毒は、政商の害とまとめあげることもできる。芸術にとって最もおそろしいのはこの政商両方にたかられることである。
 もし君が真実に独創性のある個人なら、どの歴史的地点にあっても必ず政商両方からの流毒と戦う必要に襲われるだろう。一般の人間集団は、芸術というものをじっくり理解できるほど有閑でないのが普通である。だから、かれらによって偽造された模造品やまやかしものの権威の方が無私の創造より貴ばれることも多い。
 絶望した個人の中には、かれが天才的であればあるほど孤立し、遂には自殺する者もめずらしくない。だがしばらく時がたてばそれらの俗物は散々のけ者にし生前罵倒を尽くした君の亡きがらを神のように崇め、国葬にしたり作品を財宝にしたりする。

 つまるところ、政治好きと商売人には俗物性が普通なのである。もしそれに気がつかないとすれば、君が同世代に現に存在している真実の芸術家を知らないからに過ぎない。天地というほど彼らの精神のよしあしは違っているものなのだ。政商は俗物であるがゆえに、君を虐げて平気である。そしてたとえ早死にさせてでも作家の仕事量を搾り出して自分のものにしたがっている。なぜならかれらにはどう頑張っても君と同等のものをつくりだす才能がない。

 我々は歴史的経験に照らして、後生の芸術家に向けて次のような忠告を贈ることができる。
「孤高を貫け、群れをつくるな」と。
もし記憶しやすい理念に昇華するなら、独行主義を貫くべきだ。貧乏や無名を歎くな。それはみなすぐに過ぎ去る苦労なのだから。
 もし体のいい取引気ある者にたかられたり、群れをなして君を褒めたてる者が現れたらよくよく注意せよ。それらは俗物であるがゆえ愛想を尽くし、君の成果物を法外に搾り取ってはおのれのものとして支配し、無能さを隠蔽しながら君の代わり大衆へ自慢するためやってきたのだ。