2008年6月22日

生物学

共生進化を慮れば各地の類人猿がそれぞれの草原に適応して共時的に同位種を形成した、という事はありそうになく思われるかもしれないが、大陸での集団移動は海洋より遥かに困難を伴う結果その速度は極めて緩慢なところから、各地の原人が滅亡したという予測はあまりにも短絡的に過ぎる。それらの原人が証拠付けられる限り、適応放散が人類への進化に直接の原因なのだ。なぜならとある突然変異が大陸縦断というかなり低い確率の出来事を通じてかくある地上界の隙間を埋め尽したなる空想には古代文明の形跡が連鎖的に見えるほど、独立しながら同時多発している原因を、偶然に委せるという脆さを説明し切れない。単一起源説の証拠では民族大移動と古代文明の形成とを十分補完できない。
 我々は地殻変動で地球各地に共時的に現れた草原への適応が、独立した各地なりのapeらを其々の土地での人種形成に大きな役割を果たした予想をおろそかにすべきであろうか。独立起源説は草原という場が類人猿に提供した新たな適応課題が、各種原人らの二足歩行の直接の原因であること、それから彼等が大陸を尋常ならぬゆったりとしたはやさで各地が環境抵抗に従って移動したというよりは単に生息地周辺の造山された場所を適地として一部浸透して行ったと考える方が人類の生息範囲の広さを説明するには合理的な解決であろうことを示唆するに必要条件を満たしていると思われる。即ち原人なる種概念は類人猿が各地の草原へと、未だ森だらけであった陸続きの間に浸透済みのチンパンジー種から生息地域を伸ばした種類についての獲得形質の方向性であろう。新人と呼ばれる種概念は一般の陸上生物が大陸移動の緩慢さを鑑れば、寧ろ類人猿時代の拡散に関する出来事であって、人類自体の起源とは類縁が薄い事情であると思われる。これはアマゾンの原住民が現代にあってもルソーの理想へ従順に確かに少数ながら生息していること、ゆえに運か不運か文明に目を拓かれなかったかれらが若し我々の先祖達の厳密な証拠なら、森林からの外出が二足歩行から一連の大脳発達に切っ掛けで、適応課題が異なる環境では原人自体の好適な獲得形質が異なることから明らかだ。人類と一見された性特徴は原人の草原に進出した種類についての事実であり、その起源は地域にあって遺伝子にはない。独立起源説の根拠となる観測は適応放散と性選択の速度が大陸にあってはどれだけ違うかを調べるところから発覚する。我々は原住民の暮らし振りと交接の可能性とを区別することで、エイプからヒトへの種分岐が段階的にではなく一度に、いわゆるミトコンドリアイヴの世界進出によるのでなく草原暮らしの種族と森林暮らしの祖先との急速な形質転換、いいかえれば適応的な性特徴の大幅な位相変動があったことを直接の根拠として予測できるであろう。
 だから全体として人種間の相違は草原の置かれた環境状況に依存している。それらの間の変異がその近辺森林に特徴的な類人猿との近似より甚だしい事こそ動かぬ実証であるだろう。