2008年2月8日

小説文化論

ポストモダンの枠内で、近代小説すなわち実存主義小説は女性にとってのみ現実味を持つ。彼女らは自由を求めながら資本主義社会に異論する、一昔前のサルトル型男性の生き方を模倣しているからだ。
 近代小説はもはや女子供にとっての慰み物という程、文化的に貶められた亜流であり、我々には参照に足る内容を伴いはしない。何故なら情報化にあっては資本主義自体の脱構築が命題となるので、新たな時代状況へのより複雑な適応文化型構築は単に工業労働従事者のような結婚か仕事かで悩めてしまう女流の容易さに一切準じない。彼女らは既得権益の老人相手に近代小説の女性主人公版焼き増しを、既存の手法の枠内で惨めにも繰り返すのが精一杯だろう。

 現代文学の中心命題は情報社会型の言語文化を様式化することにある。現代文学者にとって近代小説やそこで獲得された諸手法は単に流用の道具に過ぎない。