京都、君が訪れた場所。
金沢、君が訪れた場所。
先行の知れない不安を解消するには、君は旅を続けるしかない。
奈良、君が訪れた場所。
那智、君が訪れた場所。
何年前から何年後までを支配する景色かも知れず、君を狂おしく取り囲む世界にある。
死に至る迄の片道切符を渡される。君は旅を続けるしかない。
何事も隠しきれない旅の途中では、どんな形而上学的存在からの恩寵ですら魔法の言霊にも等しい。
それでも、君は目の前の道を脅迫された野良犬のように直闇雲に辿る筈だった。
誰一人として君に共感を寄せない。しかし、君には他の道は存在もしない。
池袋、君の訪れた場所。
新宿、君の訪れた場所。
品川、君の訪れた場所。
どこにも君の居場所は無い。どこでも君には安らぐ暇がない。
とにかく君は永遠の前では致命的に無力で、偶然に匿われた草場の隅を占める浮浪者に等しい心地だ。
それでも、この世界では旅を続けるしかない。この世界には家と呼べる場所は無いのだから。
日本、君の訪れた場所。
地球、君の訪れた場所。
太陽系、君の訪れた場所。
天の川銀河、君の訪れた場所。
最初から最後まで君を徹底して追い詰めたのは抜本的な孤独だけだった。
産まれてから死ぬ迄の間、君には心安らぐ暇もない。それでも君は人間と呼ばれる僅かな期間に順応する様指導されてはいた。
特に意味もない現実の前で、喚きにも等しい偶発事の再拝を賜る気分はどうか。
お前には心安らぐ場所は用意されなかった。お前にはどんな安心も用意されなかった。
短い命、君が訪れた場所。
永遠の孤独、君が訪れた場所。
旅行く先々で君を歓迎したのはひとえに、観光客向けの偽善者達の搾取目的だけだった。