ジニ係数には配分時と調整時の違和が存在し、その運動間を測る新たな係数が発明されねばならない。これには微積分より流率法的発想が役立つかもしれない。かつ、自由と福祉の微妙に曖昧なジニ係数自体では困難な事だが、新たな係数なら理想的値というのが定式化できる可能性がある。
これを仮に余裕係数と呼ぼう。余裕係数には固定的ではない、運動力のような特定の数次方程式の範囲で、絶えざる社会変動の最中の国民の充足感をある程度数学的に指標化できるかもしれない。尤もこのような幸福感はむしろ量的なものであり、必ずしも質的なutilityを意味しない。却って途上状態のハングリー精神やプロテスタンティズム、騎士や武士のストイックな道の中にすら活力から来る高い幸福があるだろう。従ってミル的な質的功利主義の立場から更なる指標検討が必要となる。だが、一国民経済の政治的調整の指針としてはある程度、ジニ係数よりそれは有効な筈だ。