ゆっくりと光が舞ってきて、赤く染まった山の端を均一ならないにじみで充たす。夜の奥から聞こえる静かな声がやさしい人達の足跡を鈍らせてしまう。
秋野原になびく幾重もの雲の一枚に乱れて懐かしい空が散りゆく刹那、君が代もまた杞憂の風犠に溶け、流れ去る。くるくると舞って大気のうちにその標識をあらわす落ち葉。更々になくも桜の情け。人々の喩えにも似て藤の原。咲く先々では果てり、誇り、忍ぶ。調度の向こうへくぐもる笑い声。綿毛を蒔いて花びらの夢中を知るたんぽぽの魔法に掛る。次第に明ける朝方のまで柳の渚を伐る未来。いずれさすらい、知らぬまでもなき由を聡る。そうして行く。