天空は自由の音楽に開かれた形態を以て、地に這う様にして暮らす人類達を馴らして行く。彼らは幸福と悲惨とを食べ物にして日を暮らす。何の為に現れたか知らず、いずこへ朽ち果てるか判らぬ。日々が廻るのに合わせて社会という舞踏に戯れる。
花は咲き、萎れ、入れ換わる。波は打ち、退いては返す。林はなびき、清流はせせらぎ、森はわななく。湖が満月を映し込み、沼地が遥かに霧を呑む。滝が轟々と大地を揺らす。
砂漠は嵐を含んで静寂を湛える。それでも答えは見えない。自然はあるがままで、全てを一因ののりのもとに開陳している。虚ろな精は幽幻の縁に漂って、確からしきもの、建築を探求している。
それはだが、今世の物象のうちに在りはしない。永久を慧眼し得る神格の名残りとしてのみ、理想の宵のまじわりに游んでいる。