2006年8月31日

人気と成功について

芸術が商品として市場へ流通してからその特権性は失われた。人気主義がここにある。ジャーナリズムとアカデミズムが対流する様になった原因もやはり、印象派以降でサロンが市場化されたからだ。
 実際、それは写真や映画の誕生、鉄・RC・ガラスという近代素材の発明、活版印刷術の勃興、蓄音機の発明といった工学に対応して出てきた美学の手段であったにすぎない。即ち、人気芸術の潮流は大衆社会の成立に対応している。現代においても、現実的批評は殆ど人気に依るのである。しかし、それはかつての特権的・貴族的な批評の精確さより遥かに能率的である。報道陣は新鮮な奇抜さを煽り、学界の権威は作品の古典的実体を見抜く。両方の結果は人気に集まる筈である。そしてそれこそが、文明内での作品制作の合理化に寄与するところ最大だ。優れた人気作家に儲けが集中すればするほど、それだけ人工環境も効率よく優化するのだから。
 作家個人がそれを目的とするか否かに関わらず、優れた作品の制作者には人気が集まるだろう。それを長きにわたれば成功と呼び、短ければ成り上がりといえる。