2006年7月15日

理由

お前は何のために産まれてきたのだ。導かれて子孫を残し、精神の命ずるままに繁栄の道たる文明を築く。お前は何のために産まれてきたのだ。猿の一種としての拙なる生存を自重し、僅かな生涯を必死の形相で過ごす。お前は何のために産まれてきたのだ。どこまで進もうと、お前が人類である限り、政経・学術の活動にしか至高の生活意義は発見できない。そしてお前はそこに不完全なる慰めを見出すしかないのだ。卑しき獣め。お前の脳髄が下等下劣であることを恥じよ。生存した理由を知らず、ある種の者に至ってはそれを信仰に合理化する。哀れな奴らめ。
 お前には宇宙の膨張の一部という側面しかないのだ。それ以外にどんな必然性もなく、宇宙自体の生成ですら、確率論に帰すべき偶然の産物に過ぎない。
 お前が生きるにはそれ以上の理由はない。お前の原理は生存目的に開発された自然の機械なのだ。利己主義にしかお前の根本的規律はあり得ない。たとえ最高善たる理想による文明福祉を含めてすら、結局はお前の属する生命体種類を生存させ、繁栄させるなかで個体間種内競争の結果、新たな宇宙の動的形態を生じさせようとする膨張運動の一部としてのみ、生活の具体的事情は定義できる。お前の拙い知能ですらも、その為に設らえられた機能に過ぎない。