2006年2月18日

都市

平和に暮らす為には和平に遁走しなければならないという逆説を認めない仙人は、俗界の戯れを笑って満足だろうか。けれども進歩の風に吹かれたら、そういう厭世の聖者でさえも遊びに、俗世に降りてくるだろう。
 華やかで美しくみせている、実に酷い都会。そこに暮らしている賢愚老幼無数の人々を、慈まずにいられる。輝く街の灯のもとには新しい命が今、育まれようとしている。
 醜さと歪みを潜ませ、栄華と便利を提供する都市。人間の造り上げた文明の形。
 なぜ君はそれを崇拝しないのか。我々の巣が描く遠近法に則った風景画のどこかに、君自身の生き姿は含まれているのに。