2006年2月14日

福沢の文明論

福沢は大衆の知的水準の向上が文明化の主眼だと考えた。だから自ら大学教育を行いながらその短期的目標として国粋主義を掲げた訳だ。
 他方で現代、民主政は大衆社会の自己啓発に寄与するところ必然では無い。Mass communicationが行うのは情報伝達であり知識養成ではないし、資本主義経済は知的目的とは必ずしも一致しない市場原理に基づく。では文明化の中央は果たしてどこにあるのか。
 福沢はアリストテレスの奴隷制での中庸的民主政の観念を近代化した。つまり中流の知識人による先導に文明を見いだした。それ自体はミルの功利主義、特に『自由論』からの引き写しだったとしても。