2005年12月24日

命の歌

優しい闇夜が君の住む家の周りに透明な帳を下ろす頃、空には瞬く星々が数え切れないだけ輝く。我々はその一部だ。
 山の奥の静かな水溜まりに小さな波紋が広がる。すると次第に水面は激しく振動し、春の訪れをこの地に記して行く。空には半月が架かり、森の中で営まれる幾つもの物語を寛容な表情で、慈悲深く見守っている。
 僕は際限ない自由の地平に立って世界の終わりを見据えている。新しい表現が生まれては消える。僕の前には紛れない無限の水平線が延びていく。
 空に浮かぶ雲が、地球上に絶え間なく吹いている風の存在を教えている。どう転んでも僕は、その一部だ。あらゆるお話が大切な役割を果たした後、美しい時の流れがどのような部分も押し流し、消し去って行ってしまうだろう。
 街の中に無数の名もなき夜の明かりが灯る頃、彼らは過ぎて行く陰影の洪水のどこかでとても大事な命を羽含む。通り過ぎて行く時代の音律に流されながら楽しく、遊んでいる。
 空には輝く新月が架かり、この蒼い星に愉悦する理由のない運命を見下ろしている。