2005年12月22日

春夏秋冬

空から温かい雨が降り注ぎ、育たなければならない命を少しずつ成長させて行く。君の家の庭にも同じ様に優しい栄養が注がれている。土の中で微小な生物が、明日の為に必要な生態系を循環させている。太陽が周ってやって来て、途切れることの無い戯れの輪を繋げて行く。やがて君が死んだら彼らの一部として働くのだ。私達には、それが分かる。
 春になる。君の家の庭には桜の花が咲いて、すぐに散ってしまう。美しく、正しい。そこには無駄が無く、あらゆる仕草が洗練されていて、儚い。
 やがて花びらは地上の小さな欠片となって消えて行く。しかし生命力は次の季節を構成する原動力として蓄えられる。夏が来る。青々と茂った庭木のどこかのちょっとした日陰に、近所の猫が涼む為の昼寝の間が巧く出来ている。
 秋が過ぎ、冬になる。黄色く染まった銀杏の落ち葉のどこかで、冬を越すべく蟻達が懸命に働いている。やがて北からの風が地表からそれらの形跡を消し去る。雪が様々な形態を一様な表情で綺麗に覆う頃、君は部屋で蜜柑を食べながらテレビゲームで遊んでいる。
 暫くすると太陽が再び角度を上げる。そしてまた、新しい一年が過ぎて行く。