2005年9月23日

雑踏の上で

君は大都会の路上に立ちすくんでいる。知り合いもいない、頼る当てもない、完全無欠の孤独の中で目の前をただ行き過ぎる雑踏に紛れ込んでいる。空は、真上から君を見つめている。マクドナルドの窓向きの二階席は観覧用に体裁づけられている。数限りない人の波が君を飲み込んで行く。空はコーラを飲み込む。
 どうして何の理由でこれほどの生き物達が産まれてきたのだろう。何を求め東奔西走しているのか。なぜ文明がはぐくまれ、何ゆえそれは続けられるのか。問いは、空間に吸い込まれ二度戻らない。歩いて行く幾多の人々が疑いを消化し連れ去ってしまう。僕はLサイズのカップの蓋を外す。コーラの味が微かに残る氷を口に運び、かじる。君は相変わらず絶え間ない人ごみに混ざっている。何を待っているんだろう。
 その想いは幾重にも連なり、運命の輪っかになって時間を繰る。空気を震わせ宙を漂う。最後は店内のムードに溶け、世界の緻密な構造になる。
 やがて君は歩き出す。新しい目標に向かって、少しずつ、少しずつ。けど確かに、真っ当に、間違いなく。僕はそんな君を眺めていた。