2023年2月20日

なぜ成田悠輔氏の無意識資料民主主義は無責任衆愚政治を伴う致命的誤りにすぎないか?

成田悠輔氏の『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(2022年7月)の概略を読み、私がその批評をした講義が『無意識資料民主主義の企てにある資料科学主義の批判――道徳不可知論者の掘る無責任衆愚政治の墓穴』(2023年1月6日)であるが、以下に大まかに内容をまとめる。

  • 成田氏のいう資料科学主義(統計資料を科学的に信頼できると見なす考え方)は道徳性とは何かを定義できない。
  • よって成田氏の根底にある考え方を道徳不可知論といえる。
  • 政治的意思決定の際、成田氏はSNSの統計資料などから民衆の無意識を資料集めし、それに基づく多数支配をすべきという。
  • 成田氏の道徳不可知論に基づくと、政治的意思決定がどれほど不条理なもの――例えば高齢者大量虐殺などを求めていても、それを政府が採用してしまう無責任な衆愚政治に至る。
  • このため成田氏が『22世紀の民主主義』で主張する無意識資料民主主義(人々の無意識を統計資料化して意思決定すべきという考え方)は、政治道徳を、唯の大衆迎合や科学主義(科学を信頼する考え方)の過信で無視するたぐいの誤り。