成田悠輔氏の『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(2022年7月)の概略を読み、私がその批評をした講義が『無意識資料民主主義の企てにある資料科学主義の批判――道徳不可知論者の掘る無責任衆愚政治の墓穴』(2023年1月6日)であるが、以下に大まかに内容をまとめる。
- 成田氏のいう資料科学主義(統計資料を科学的に信頼できると見なす考え方)は道徳性とは何かを定義できない。
- よって成田氏の根底にある考え方を道徳不可知論といえる。
- 政治的意思決定の際、成田氏はSNSの統計資料などから民衆の無意識を資料集めし、それに基づく多数支配をすべきという。
- 成田氏の道徳不可知論に基づくと、政治的意思決定がどれほど不条理なもの――例えば高齢者大量虐殺などを求めていても、それを政府が採用してしまう無責任な衆愚政治に至る。
- このため成田氏が『22世紀の民主主義』で主張する無意識資料民主主義(人々の無意識を統計資料化して意思決定すべきという考え方)は、政治道徳を、唯の大衆迎合や科学主義(科学を信頼する考え方)の過信で無視するたぐいの誤り。