2022年1月23日

単なるIR(投資家関係)情報開示だけでなく開かれた中長期投資の為にも日本で四半期開示を非義務化すべきでなく、むしろ一層の会計透明化のため世界に先んじて国内上場企業が特定の勘定科目を任意に隠す事を法的に禁じるべき

企業の四半期開示が義務でなくなろうと、企業の情報開示が不確実で不十分ならその企業を株主が保有するのをためらう様になるだろうから、四半期開示を非義務化する必要はない。
 また四半期開示と中長期保有の間に、自明の因果関係があるとは限らず、中長期保有を目的にした投資家は四半期決算をみても、容易に自らの保有企業を手放そうとはしないだろう。現時点でも株式の売却益に都度課税があるからである(株式譲渡益課税、資本益キャピタル・ゲイン課税)。

 こうしてみると四半期開示の非義務化は 、単に上場企業側に1年間かけ会計操作の不正をおこなう猶予を与える、悪意ある法制であると考えてよいと思われる。その様な不透明で閉鎖的な市場を作れば、投資家一般にとって、日本企業を保有する鼓舞は諸外国の透明で公正、かつ開かれた株式市場に比べ、低くなるだろう。

 それどころか或る株式市場の流動性が高くなる事、即ち短期投資家がふえる事がそのまま、市場の活気や諸企業間の新陳代謝を促進する面をもつだけでなく、もともとその様な投機的性質の、偶然的浮動を含む富の循環がなければ、或る株式市場はつねにあらたにかわりゆく国際市場環境に最適化されない以上、中長期投資家のみが或る株式市場に有益とはいいがたい。この見直し問題について、金融庁らへ日本の株式市場を冷え込ませようとそそのかしている何者かによる、元の命題の建て方が誤っているのだ。

 よって、四半期開示の非義務化は不必要なばかりか日本の上場企業一般にとって有害かつ株式会社をとりまく市場全般にとって公害な施策と考えていいだろう。もしその様な施策が東京証券取引所その他国内でおこなわれれば世界の投資家らの目は、アジアの極として香港証券取引所に移っていき、日本経済の没落を派手に演出するのが誤りないだろう。
 むしろ国会議員が金融庁と共に新たにふみおこなうべきは一層の会計項目の開示義務で、株主が日本企業の実態をつぶさに知る事ができる条件づくりである。投資は或る企業活動への信頼のもとにおこなわれるべきで、東京証券取引所に属する企業群に限って、少なくとも米国企業一般や中国の一部企業への信頼に比べそれはいまだに不十分だからだ。
 例えば日本では世界に先んじてその企業にとって不利だが市場にとって業績を見通すのに必要な特定の勘定科目を、企業がこれまでのとおり任意で隠す事はできなくするべきだ。優れた企業は商売にあたってどんな成績も隠す必要はなく、一時的な失敗でもその企業自体の競争優位性が失われない限り、中長期投資家を惹きつけ続ける筈だからである。また短期的に業績が悪化してもそれを隠すより、実態を信頼してくれる投資家に極力その現状を知ってもらっている状態の方が、企業側にとって安心できる長くつきあえる優良株主をもつ事ができるのは明らかだからである。