2020年12月15日

なぜ人がなるだけ若い内から修身すべきか

始めがどんな仕事でも最重要な部分だ
――プラトン『国家』2巻

始めは全体の半ば以上である
――アリストテレス『ニコマコス倫理学』1巻7章、1098b

これら古代ギリシア人師弟の金言が示すのは、当該引用部分の周辺文脈から、人は習慣の動物で、特に人生の始まって間もない頃の癖づけの向きほど、「鉄は熱いうちに打て」式にその後の人生の大部分が決まってしまうといっても過言ではない、との洞察だ。
 そしてこの事は、人生の半ば以後、急に習い性が変わった例が実体験として珍しい限り、或いは老年期にかけ長い修練が必要な或る大業を完成させていく求道者がいる限り、脳の可塑性から理論的にはありうる例外を除き、太古からの経験則としておおよそ、確かなのだろう。

 通例、愚かな若者ほどこの逆に進み、青年期を悪徳や無為の内に過ごし、結局その延長で大成しない。俗悪な大人が現に大勢いるのはこの為だ。