2020年9月12日

日本政府は自民党のお家芸である国家社会主義政策を離れ、サッチャーイズムや蓮舫式に習って、古典的市場放任政策へ展開すべき

政府は不採算分野に財投する傾向にあるし、そもそも経済弱者を助ける資産調整以外の目的で支出すれば特定の営利に奉仕する不正でもあるから、MMT論者が不採算分野へと銀行預金を横流しさせようとするのは、単に国単位で非生産性を拡張しようという国家社会主義者の悪意に過ぎない。
「債務不履行(デフォルト)に陥る」という表現は、政府が返済不能な債務を何らかの手段――例えば預金封鎖や、敗戦や踏み倒しによる帳消し、侵略戦争による特需演出でのその場しのぎなど――で無効化した場合と、政府がその事実を認めていないが返済不能がほぼ確定で実質財政破綻している場合とがある。現日本政府は後者で、返済に必要十分な歳入が恒常的に足りないばかりか低経済成長率のためそれが将来も期待できないので、いわばゾンビ国家といっていいだろう。
 MMT論者はその国が半永久的に生き延びていけると思い込んでいるが、実際には低成長率の主因が不採算分野への資本の偏りでもあり悪循環だ。
 つまり、国家社会主義的な赤字国債発行を1994年来くり返してきた現日本政府は

1.サッチャー改革同様、最小限度の社会保障を除けば、ケインズ政策系の財投を節減する
2.福祉・教育に関しても、蓮舫式に不採算な公的部門をなくし、民間委託を使う
の2方針で国全体の不採算分野を減らすしかない。

 経済的な生産性の定義から、国全体の経済効率を上げるには、利益率の低い仕事は外注しなければならない。
 しかし戦時に他国から資源供給が止まった際に国民が餓死しかねない島国である限り、農業は補助金によって維持されてきた欧米同様、この点では命を繋ぐ例外的保護産業とされるべきものだろう。

 第二次以後の安倍政権下で日銀のETF購入により実質国有化された日本企業群は、なるだけ早く民間資本に返されねばならない。値嵩株に集中又は傾斜投資する形になる日経ETFは、総じて高成長の新興企業が本来借りられる資本を、既存の低成長の大企業に回す形になるからだし、それは日本企業一般を弱くする。いいかえれば日銀はゾンビ企業をいきのびさせてしまっている。それは二重の意味で――1つは中央銀行による低成長の大企業優遇で、1つは新興市場軽視による高成長企業への資本流動性の阻害で――国全体の生産性を下げているだけだ。日銀が本来為すべきなのは単に、一般の企業への預金貸しつけにすぎない。
 一方で、年金機構(GPIF)の国際分散投資の方針は正しい。それは現代ポートフォリオ理論によれば少なくともアカデミズムこと大学の金融工学(シカゴ学派)により理論化されている中では最も保守的な運営方針の1つだし、現時点では最も危険度の少ない方式で足りない年金を補える事が明らかだからだ。

 日銀の日本企業への集中投資、特に日経ETFでいう値嵩株への傾斜投資は、単なる低生産性の助長に他ならず、かつ、日銀の資産を増やす事は国全体に何の公益もない。
 中央銀行は近い将来、通貨発行権を民営化した暗号資産の発展で合理的に消滅するだろう。それまで彼らがすべきは資本流動性を高める事だ。即ち日銀消滅までの彼らの使命は、将来性のある新興企業など一般の銀行が貸しつけの危険を回避しがちな対象に、より寛容な資金提供を行い、経済全体のカネの流れをよくする事でしかない。大企業は内部留保が十分あるのでこの目的の為には、それ以上の資金を必要としていない。現日銀は唯の相場操縦者だ。