2015年9月18日

美術論

美術とは模倣であり、世界の諸像を生き姿として保存するものである。美術が写す対象はあらゆるものごとであって、本質的に複製へ属する。模写、模造、模型、これらが美術作品の全内容である。美術は作るが、且つある形式をとるが、それはこれらの内容を巧みに表現する為の仕組みである。
 いいかえれば、美術とは世界を後から認知させる為の方法論としてのみ評価できるものである。美術という模造物、即ち現実に程よく似せたものがある為に初めて、人類は自らの属した世界の唯一性、あるいはその内奥にある彼らにとっての意義に自覚できる。
 ところで、アメリカにおけるディズニーの商業美術の利潤保護を代表として現代に急ごしらえされた著作権は、この様な美術の本質的意味内容に対して、模倣や模造を禁じるべきではない。その製造物の販売による利益でさえ、模倣製品がそうある様さらに優れた特徴、廉価版であるとか改良版といった場合がある。寧ろ全ての過去の美術の進歩とは、こうした形式の進化、展開の歴史であった。即ち著作権の立法にはその社会的意義に、人類未然から存在する美術の世界史的伝統に比してあまりに卑小な、既にして大いなる過ちがあるのであって、単なる商標登録された特定の型をもつ品物に関する商標権に、著作権なるものの全権利は吸収され消滅されねばならないのである。