ヒトの赤緑の色弱は、主に男性に遺伝している。その主要な訳は戦場や事故現場など緊急事態でも正気を失わない、卒倒しない、失神しないといったむしろ誤認可能な特徴によって保たれてきたかもしれなかった。また執刀医の場合も、この特徴は赤色や鮮血に強烈な印象をもつ変異より有利だったろう。
現代社会が緑と赤の識別をさせる条件は、ユニバーサルデザインやバリアフリーによって強制的に緩和させられていくべきだが、むしろ人類の中ではこの赤緑色弱の遺伝子は起こりえる事態への適応力の多様性として維持されてよく、いわゆる障害という考え方を崩壊させる。
そのおどろきにたる血の色とあたりの森の色を見分けにくいという条件は人類が辿ってきた生物世界に於ける極限性、例えば仲間の死傷やその介抱に冷静さを持たせるに適応的な個人を保たせてきたのだろうし、医療が存在するかぎり今後ともそうなるかもしれない。