違法ダウンロードの刑事罰化の法案は、もしその方向で進むと、国家とか政府とか警察組織とかの利害によって市場が侵食される可能性が高いので、成立は見送るべきだ。
アメリカでの同様の法案も、おもに中国に於ける海賊版からの盗難対策という面が強いのだろうが、国家規模での全体主義的統制になっている点に注意がいる。もし国家という群集が、何らかの言論の自由を弾圧してしまおうとした時に権利侵害ができる状態になっているのは、その違法ダウンロード摘発による利益よりも政府の歪みという面に損害が大きくなるかもしれない。
告発の抑圧とか、表現の倫理性に関する国家からの干渉とか、これらの側面がネット上の情報のやりとりに介在すると違法ダウンロードの刑事罰が悪用される危険がある。政府当局にとって不都合でも公的に有益な情報が非営利的にいとなまれていた時、或いは倫理的に異常でも本来の啓蒙の役目を果たす情報が自由に市場でやりとりされている時、それを全体主義的な政府がある意図から摘発し情報統制するよりは、既存や他の法の枠組みのなかで各企業の民事訴訟を含む自由裁量にまかせて放任されている時の方が、総合してみた国民の利得あるいは道徳は高いのだろう。
少なくとも検閲ではない段階で、企業や個人が開発する技術に追随していける様な警察機能は必要になるだろう。但しそれはおもに軍事用にされ、他のはたらきに関しては寧ろ民間事業体によって開発されたhigh-tech機器を採用していく方が、はじめから適法な情報流通を恣意的に抑制してしまうより結果としての情報機器は高度化し易いだろう。
これは成果給の無際限な民間事業と、個々人への報酬は一定の税収にとどまる公的機関のどちらが技術開発へ高い意欲をもちえるかにあらわれている真相だ。