2007年4月15日

美術論

美術とは地球文明の最適環境への折衷術に他なれはしない。装飾としての絵画や彫刻についても同じ、建築構造の合理に対する忠節の様式であればこそ造型的である。究極で美術を基底するのは、同時代で最も人気ある構造用建材の合理的な工法なのである。美術家とは次々に技術革新される構造建材への装飾適正を試作する職能。同時代の技術段階を象徴する事があらゆる美術の目的にある。従って、建築による総合によってのみ、美術の時代様式は大成される。
 又技術に定常状態があり得ないかぎり、全ての美術様式は仮設的模型以外になれない。然らば、美術の究極目的は同時代の折衷環境を最新技巧で実現する事にある。形相は常に理念への漸近としてのみ現れうるのである。どの様な可能態とはいえど次の現実態のために縁起している。究極の形相とは理念そのものに違いない。美術を固定的な本質と考える事は以上のような理由で不可能だ。それは流行を先導するような最先端の感性術に過ぎない。
 美術史とは工芸における時代間流行の必然な展開を追いかけた記録であると云える。独創と呼ばれる天分は時代様式を代表しうる個性に限って用いてよいのである。