2006年11月7日

起源

自ら然りして発露し、地表をすべる人模様。神奈月かんなづきの流れるになびく無性ムショウの清花よ。形見を為して、柳にしだる。輝々として雪崩なだりゆく満開の桜桃歌にまだらの王子が写る。
 さりとて信ずるでもない。暫くすれば旭の礼頭温と共に枕の琴音がしげる。庭鳥テイチョウが吠う。山端やまのはに乱るくれない音符のうとよ。昇華されし品詞が舞う様言の葉の秋に酔う迄不忍しのばずや。
 滝川の流々と詣でるしがらみに揺れて雲雀ひばりがわなゝく白天に我。待つ宛とて知らず、目当てとてなき玉鬘。夢現ゆめうつつに惑い孵り照る空色の悠尋。唐笠を挿して這う人時雨ひとしぐれに紛れ、往時猶今わん。去ればかなしき哉。かなし。
 心地の侭にすら風に消ゆべき藍の岸。うをの群、自動車のともしび情仁なさけびとらのいとしき囁き。拡がり行く大気へ不知火しらぬいの矢を射ぬく花火へ。薄紫、血潮、青碧、白金、黄土、濃紺。はかなけり。やゝもすれば船になる。あそびに仕舞う雲になる。文に想えば色になる已徒然し。省みる亜細亜の旅人たびと