突然に光が射して夜闇は明けた。美しいものが行路を満たした。誰かは知らない。恐らくは女が、道案内に立った。それから世界は趣きを変えた。
恐るべきことは恋愛である。両性を伴って生けとし生きるものどもをなべて浸し、一切を包み込む力。いかなる天才といえども逆らえない暴挙。香りを散らして己の自然を紅葉させる季節に、君もまた情けなく揺られなければならない。
孤独は醒めた。定められた道筋に沿って一日が始まり、終わる。だがひとつだけ常に、満天の夜空に輝いて自分の全営為を照らす星があった。どれだけ言葉を尽くしても、適当な仮名は選べない。存在を超えた抱擁があり、個人を失くした救いがあった。
「胡蝶の夢、とはよく言ったものだ」
と、
「今昔の腰間を
たとえば鶴は浮世に舞って、その白き姿を永遠に留めません。彼らは旅路のあいだで憂い、悦び、鳴くのでしょう。
「貴君もそのうちである。そして
恋人はやがて去る。しかし、それを怨むひとはどこにもいないだろう。