2006年9月5日

建築論

建築芸術が絵画と彫刻という純粋造形に異するのは、社会的合理化という一点にあるのだ。つまり作品の理由づけが建築家の職能に他ならない。それは文明の空間が、機能即ち用途のもとに公共建設される自由主義社会的な定めの故に、である。逆説すれば、私設の空間はどこまでも純粋芸術であり得る。仮設の作品が叫ばれる所以だ。従ってそこに設計主旨の説明は不要。
 君が建築家として働き金銭的報酬を得るとするならば、職能を発揮せねばなるまい。則ち、社会的合理化によって再創造的な造形物を公益のもと建設へ位置づけねばならない。建築芸術、建設に救済という内容を見い出すのはここに於いてなのだ。それは普遍性への献身であり、自由なる純粋造形群を、ある時代的地位の元へ整備結晶し、文化財として永久化に捧げる総合美術の仕事である。