2006年7月16日

建築論

素材の洗練はそのまま建築表現にとっての可能性を意味するところ大なので、建築史とは、究極まで還元すれば素材史に過ぎないと言える。
 設備・構造は同様の時代性に、常に制限されている。従ってある巨匠の最良の構築物ですら、多少あれ過途的なもの・可変空間にならざるを得ない。
 普遍空間の理念はここから計画の意義だけを抜き出して、永遠的なもの・不変な空間に漸近しようとする。それが文明の建築的力学を代表する現代だったのは確かだし、おそらく永久にそうだろう。ベルリンのナショナルギャラリーは現代建築の古典的記念碑として、地球規模の文化財である。
 普遍空間のヒューマニズムを、より生物主義的なものにまで還元しなければならない。人間相対観のもとに思考を突き詰めれば、空間の質的差異が問われなければならない。均質空間の、脱構築が謀られる可だろう。
 環境合理に従って、心地よい空間の定義を更新する可だ。それは人間様式のなかで、自然環境に対する最適化を図る漸近的進展に因る。デ・ステイルが真に普遍的である為には、人間相対観が是非とも必要だ。体感要素ですら我々の知能程度に依拠するから。