2006年2月24日

政治哲学

もし一国のみが強大な抑止力を持てば、世界は権力集中で腐敗する。これは宇宙戦争の場合にも適用できる。つまり武力は均衡させなければならないし、睨み合いに留め、別の側から次第に対立を緩和して行くべきだ(冷戦)。しかしこの様な構造は一触即発の緊張関係をもたらし、人類にとって必ずしも好ましいとは言えない。ここに現代の新しい戦争の形式が必要とされる。
 抑止力および国際協調の理想が有する矛盾は、よりよい政治的方策によって解決され得る。以前のやり方が超大国の存在によって実現不可能な限り、重要なのは絶対一極化した権力を分散してしまう手法。これには強力な武器による脅しや理想主義理念だけでは足らない。ここで科学研究情報の国家的開示の策が立てられる。つまり、新たな武器を作る手段は科学理論の技術的応用にあるので、この理論独占の後先だけが現代でもなお戦争を引き起こし得る陋習。科学研究のあらゆる情報は常に国家機密にされてはならず、必ずや万国へ開示されていなければならない。もしこれが果たせれば世界中に兵器独占の余地はない。なぜなら基本的に万国が互いに隠れた抑止力を持ち、不断の研究解放で平和主義哲学の殉職者となるからだ。
 つまり、現代地球世界における諸悪の根源は、この科学研究の国家機密の習俗にあると言って良い。現在までに存在し、また今後生まれ得るあらゆる超大国の恣意的支配体制を脱力させるのは唯、国際連合においてあらゆる科学研究情報の国家的開示法案を採択施行すること。これに参加しない国を野蛮後進と見なし、集団的安全保障による監視と国際的連携の外交断絶の輪で、和平的に降参の断崖へ誘うことはさほど難しくない。例えこの超大国が自給自足の幸運にあったとしても、絶交や蔑視の国際関係に晒されて腰の折れない筈はない。従って科学研究情報の国家的開示の法律制定は、地球や、より広く宇宙の諸星間の戦乱を緩和する適切な方策だと考えられる。
 星間戦争抑止の場合、あらゆる情報を開示する義務を星交条約に含める必要があり、これが不可能な時は鎖星を粘るか又は密かに情報網をめぐらして相手星から研究機密を取る必要がある。しかし、この星間交渉の論考は飽くまでも圧倒的に近い位置に似たような知的生命体が同時期に産まれ、しかも同程度の現代文明を持つに至った場合しかあり得ない。そして太陽系には大体その様な気配は無いので、地球人はしばらくの間は栄華を続けられるだろう。そして、科学者同士がその研究内容を発表する時期の調整で勲章や名賞や賃金が与えられるといったシステムは断じて禁じられるべきであり、このかつての因習の野卑さを蔑むべきだ。すなわち科学者は常に研究自体の実用的成果によってではなく、研究内容の高度さの程度によって格づけされるべき(研究難易の評価)。
 だからもし人類にまったく貢献しなくとも困難とされる課題を解決すればそれを格上とし様々な栄華に浴させ、どれだけ有益でも比較的安易な課題でしかなければ名誉に値しないと考えなければならない。文明科学者の心の持ち方は、その様な真理への献身そのものの中にあると悟るべきだった。