もし全てが崩れ去り
この世に町しかなくなり
その荒れた野原に
ただはてしない稲穂がみのり
私しかいきのこった者はおらず
降りしきる星の中
夜空に輝く月を見る頃
この世でいつでもたわけていた
人という醜い生き物は
あとかたもなく土に還り
私はそこから生える木々を触り
森をとりしきる多くの生き物の声を聴く
人はつまらない落ちぶれ方をした
どこでも人のことしか考えない程に
屋根から雪がおちる
つらゝは大きくなり
雨垂れをあつめ
なにもかも透きとおらせる
海風のなぐ隙間
おゝつちはゆれうごき
かゝれたわずかな落書きを
波のおどりと掻き消した
はてしないそらの果てで
まちつゞけるねこじゃらし
稲田は赤とんぼをまわせ
全てをあかつきに染めてしまう
なにもかもきえゆく中で
ぽつんとのこった星のはなし
あのビルのうえで
なにが起こってるかみてみなよ
それらの小さな出来事は
虫の行いほどなんでもない
人というその虫は
野原にあつまった踊り虫
ビルのてっぺんで踊り狂う
なにをしてるんだろ
虫のなかには王様がいる
その虫はみつがれた物をつかい
なにもしない
虫にもずる虫がいるんだね
ちいさな島のちいさな虫の巣
虫めがねでのぞいてご覧