2010年9月22日

稲田

もし全てが崩れ去り
この世に町しかなくなり
その荒れた野原に
ただはてしない稲穂がみのり
私しかいきのこった者はおらず
降りしきる星の中
夜空に輝く月を見る頃
この世でいつでもたわけていた
人という醜い生き物は
あとかたもなく土に還り
私はそこから生える木々を触り
森をとりしきる多くの生き物の声を聴く
人はつまらない落ちぶれ方をした
どこでも人のことしか考えない程に
屋根から雪がおちる
つらゝは大きくなり
雨垂れをあつめ
なにもかも透きとおらせる
海風のなぐ隙間
おゝつちはゆれうごき
かゝれたわずかな落書きを
波のおどりと掻き消した
はてしないそらの果てで
まちつゞけるねこじゃらし
稲田は赤とんぼをまわせ
全てをあかつきに染めてしまう
なにもかもきえゆく中で
ぽつんとのこった星のはなし
あのビルのうえで
なにが起こってるかみてみなよ
それらの小さな出来事は
虫の行いほどなんでもない
人というその虫は
野原にあつまった踊り虫
ビルのてっぺんで踊り狂う
なにをしてるんだろ
虫のなかには王様がいる
その虫はみつがれた物をつかい
なにもしない
虫にもずる虫がいるんだね
ちいさな島のちいさな虫の巣
虫めがねでのぞいてご覧