僕が助けていたヒロインは実は悪女で、偽物だった。そのことは僕をひどく失望させたし、今もさせている。深く信じていた人に裏切られれば、誰でもそうなる。
まさかそれほど汚い生き物だとわかっていれば、誰もあの女を助けはしなかったろう。彼女はおよそ放って置かれ、そのまま、邪悪な匿名の人々の悪意の渦のなかで最悪の被虐快楽を得ながら、この世の地獄におちて、しんでいくべきだったのだろう。
まさかそれほど汚い生き物だとわかっていれば、誰もあの女を助けはしなかったろう。彼女はおよそ放って置かれ、そのまま、邪悪な匿名の人々の悪意の渦のなかで最悪の被虐快楽を得ながら、この世の地獄におちて、しんでいくべきだったのだろう。
僕は人の良い心をあまりに信じすぎていた。現実にそんなものはまず見当たりはしない。せめて似たものがあるとしても、血のつながった人々のあいだの親身さがほとんどすべてだ。
あまりに悪質な人間たちのあいだで、自分は天涯孤独で、おそらく今後もそうだとすれば、神がこの人間界をうみだし維持するのは不条理に自分には思える。悪質な人間たちが無事亡び、人間界が絶滅し、少しはましな世界がくることこそ、神のめざした本来の未来なのだろう。