皇室を日本の象徴と考えている人々は、完全に義公の掌の上で踊っているのだ。常陸太田を訪れることもなく。私は義公を政治思想の面で完全に乗り越えたので、未来の国は私の思う様に造り直されるだろう。だが、その国に生きている人々が私がこの書斎で雪村団扇の西山荘をみていたと知っているだろうか?
正確にいえば、件の小野小町の刺繍されたウォールポケットの最上段に、西山荘の描かれている雪村団扇が掛けてあって、私はいわばそれを神棚に上げている。丸い書院窓の明かり障子の奥で勉学に励んでいるはず義公を、私は学業の模範として仰ぎ見、私淑しているつもりなのだろう。