ブッダは生まれてこないものへ予定された救いを与えた点で、業にくりこんだ功徳をもっている。また生あるが再生しないものへもこの慈悲をのばし、生命を善行に向けた。共生体を理念とし、これゆえにひとりの生態哲学者である。
生まれてこないものの理想化は、ブッダにとって死のくりあげた理解であり、生き残ったものにとって予想された高貴化だった。それゆえに、ブッダの中では二重基準があり、一方では死か非生殖を当為視させながら、他方では功徳を推奨している。つまり、彼は現世不適応者への慰めの方便として解脱を説きながら、来世的な存在者或いは生き残る者への報徳を勧めている。こうして、ブッダの理念には共生体の完成という期待されている理想像があり、この世界観が彼に勧善懲悪の説得を行わせていた。