2021年8月5日

歴史観誤導としての作り話

高畑勲や片渕須直の原罪は、人々に皇族、日本軍や日帝幹部による侵略や言論弾圧などの蛮行の方ではなく、また広島で天皇制ファシズムに加担していた侵略加害者の事情を一切無視し、侵略被害者としての米国や連合国側による、人的犠牲を最小化し戦争終結を早める為の原爆投下事情を描かずに済ませていることだ。これは狡猾な歴史観誤導(歴史修正主義)に過ぎず、実際、彼らのアニメ映画『火垂るの墓』(小説原作・野坂昭如)や『この世界の片隅に』だけをみた子供は、さも日帝側が侵略や虐殺被害者かの如くに誤った被害者歴史観を植えつけられてしまう。
 実際、この幼稚な世界観で生きているのが現今の大抵の広島人らであり、彼らは米軍や国連軍を加害者だと今も信じているだろうし、自分達が南京その他で犯した第二次大戦の歴史的重罪についてはいうまでもなく、小御所会議で殿様ごと幕末西軍に進んで与して侵略罪(主権侵害、虐殺など)を誇ってきたことについてもなんの反省の念も持ち合わせていないだろう。彼らは自分達が暴力で負けたのがいけない、という誤った歴史観、権謀術数主義の野蛮な世界観しか、原爆投下の経験からまず一切、反省的に獲得できていないのである。

 全く同じ致命的落ち度は司馬遼太郎の小説やそれが原作になっている漫画やテレビドラマだけを見た人々が、幕末西軍による蛮行の数々、悪意ある言動の全てを美化して捉え、また、徳川側の複雑な正義間の対立構図をもさも敵方としてみる誤った薩長中心史観を植えつけられてしまう点にも求められる。薩長土肥、京都や広島といった小御所会議で西軍に与した人々の郷土史で、いかに彼らの悪意からきた徳川・天皇方への裏切りや、自発的な対外戦争、アイヌモシリ(北海道)と琉球の略奪、戊辰戦以後の侵略蛮行が美化されていることだろう!

 漫画・アニメ・ドラマ(演劇)・小説・物語の害悪とはここにあり、それは作り事に過ぎず、悪徳をもつ、あるいは倫理的に中立ではない、片寄った考え方しか持ちえない筆者の作品では根本的に悪意ある歴史観誤導の植えつけに過ぎない部分に、特に最悪の面が現れている。