科学的認識の一切は、人間社会にとって道具でしかない。この道具は技術一般と同じく使い方を指定しないので、不道徳な人は悪用する。したがって倫理学の最終目的である最高善に至る、後自然学の全体を修養しない科学者、いいかえれば哲学的でない科学者は、無知な者よりはるかに非人道的な悪人でありうる。
数学や自然学はそれ自体から倫理を導出できない。倫理は全ての知識を含む過去の思想史を参考に、当為を理想する能力から生み出される。この道徳性が欠けたあらゆる個人は、社会にとって善い行動を偶然にしか取れない。
資本経済の下で商行為を営むあらゆる商人は、哲学を究めている者(決して肩書きによるのでなく、道徳によっている)より最高善を身に着けていなければ、どれほど蓄財しても、或いはその私財で慈善活動をしても最善者たることはできない。