次第に、若いながら私は人間性の中に一点の希望を見つけた。それは賢さの種だった。私は社会分子のほんの一部にではあるが、至当の知能を持つ人類を発見した。彼らは秀才の類だった。彼らは、混雑した大衆の中からでも密かに育ち、有識という芽を出していた。私は彼らの少しずつの生育の中に、地獄での蜘蛛の糸を見つけたようだった。しかし安心はできなかった。一人が油断すれば直ぐ様、その社会上流の風紀は崩れてしまうほど微々たる勢力でしかなかったからだ。私は手記を部分公開しなければならなくなった。きっと彼らのうちには天国へ関心のある者も居る。私の手紙は多く、彼らにとっての切符となる筈だ。